はたしてこの噂は本当に正しいのか、iPhoneユーザーとしては気にならないわけがありませんよね。というわけで今回、スマホステーションの在庫からとっておきの劣化バッテリーを用意して、新品との動作比較を行ってみました。性能の変化がどれほどのものなのか、皆さんの目でしっかりとご確認ください。
Appleの公式見解
バッテリーが劣化すると動作速度が低下するという噂に対し、Appleは公式にコメントを発表しています。
iPhoneのバッテリーとパフォーマンスについて、お客様にお伝えしたいこと
何よりもまずお伝えしたいのは、お客様による製品の買い替えを促すために、私たちが意図的にApple製品の寿命を縮めたり、お客様の体験が損なわれるようにしたことはこれまでに一度もなく、今後も決してないということです。
(中略)
Appleは1年ほど前、iOS 10.2.1で、iPhone 6、iPhone 6 Plus、iPhone 6s、iPhone 6s Plus、iPhone SE上での予期しないシャットダウンを防ぐため、ピーク負荷時の電力管理を向上させるソフトウェアアップデートを提供しました。このアップデートでiOSは、シャットダウンを防がなくてはならない状況下で、一部のシステムコンポーネントの最大パフォーマンスを動的に管理するようになりました
つまり今回のバッテリー問題は、あくまでiPhoneの予期せぬシャットダウンに対応するための副作用だということです。ただApple側の言い分もわからなくはないですが、パフォーマンスの低下を公開しない理由はまったくありません。ユーザーからの指摘を受けて発表するのは、Apple側にも秘匿しておきたいという意図があったのではないでしょうか。
実際、この声明はベンチマークソフト『GeekBench』の開発元が調査した結果を受けてのものです。その検証内容を見れば、バッテリーによって性能差があるのは一目瞭然。さすがにAppleもここまで公表されてしまっては黙っているわけにはいかなかったというのが実情でしょう。
さてこの噂、状況を見るとどうやら正しそうですが、せっかく手元に古いバッテリーと新しいバッテリーがあるのですから実際に弊社でも確かめてみましょう。使用する端末は『iPhone6』、ベンチマークソフトは『GeekBench 4』です。はたしてどのような結果が出るのでしょうか。
劣化バッテリーのベンチマーク
iPhone6のバッテリーを劣化したものに換装して、実際にベンチマークを確認してみましょう。まず最初にバッテリーの画像から。
見事に右下部分が膨張しています。明らかに使い古してあるのが見て取れますね。ちなみにバッテリーの劣化具合をチェックするソフトでは、以下の表示が出ました。
新品時の最大充電量に比べて現在の最大充電量が22.7%になっています。つまり当初の4分の1以下の性能に劣化しているということです。
『Geekbench 4』のベンチマーク結果は以下の通りです。画像の「Single-Core Score」と「Multi-Core Score」の数値をご確認ください。
新品バッテリーのベンチマーク
次に新品のバッテリーで検証してみましょう。劣化したバッテリーと比べると、見た目の美しさが段違いです。当然ながら膨張も見られません。
いちおう確認のためにバッテリーチェックソフトにかけてみましたが、現在の最大充電量もとくに問題なし。
『Geekbench 4』のベンチマーク結果は以下の通りです。画像の「Single-Core Score」と「Multi-Core Score」の数値をご確認ください。
両者の比較
実際の検証結果を並べてみると、機能低下は一目瞭然ですね。新品バッテリーが劣化バッテリーにダブルスコアに近い数値を叩き出しています。試しに他のベンチマークソフト『AntutuBenchmark』でも検証してみましたが、やはり結論は同じでした。バッテリー問題に関する噂はどうやら真実と断言できそうです。
少しはAppleを信じたい気持ちもあったのですが、その期待を見事に裏切られた結果となりました(笑)。今後のApple製品に関する購買意欲にも影響が出るかもしれませんね……。
今後の行方
Appleでは現在、バッテリー交換の値引きにより騒動への対処を図っています。全世界を対象に、2018年12月まで8,800円から3,200円までの減額を実施中です。ただし利用回数が1台につき1回までという制限付きなので注意してください。
バッテリー交換以外では、近々iOSのアップデートにより「バッテリーの状態が動作速度にどのような影響を与えているか確認」できるようになります。将来的な取り組みとしても、「パフォーマンスの管理方法の改善」や「予期せぬシャットダウンへの予防強化」を継続していくそうです。
ただしバッテリーの劣化による機能低下はiOS11.2にも繰り越されており、Appleは今後も排除しないと明言しています。この状況に業を煮やしたのか、アメリカでは連邦議会の上院議員が1月10日、Appleの最高経営責任者(CEO)に質問状を送付したとのこと。その中にはバッテリーの無料交換や以前の交換者への返金なども言及されているようです。
はたして今後どのような展開を見せるのか、いまだ予想もつかない今回の騒動。皆さんも続報をお待ち下さい。
iPhone6について、実際にAppleユーザーとしてバッテリー交換可能なのかAppleStoreに質問してみました(2017年1月11日)。
それによると料金は郵送修理の場合3,200円、店舗修理の場合3,200円+技術料(要問い合せ)とのこと。ただし現在、問い合わせが爆発的に多いらしく、納期は早くて2~3週間、遅くて3月から4月までずれ込む恐れあり(店舗では在庫状況にもよります)。しかも修理扱いなので、データは必ず消去するようです。
もしバッテリー交換を希望する人は、必ずデータのバックアップを行うようにしましょう。